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アーセナルの戦術分析「課題山積み」対ニューカッスル

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ウナイ・エメリ監督の元、新シーズンを迎えた新生アーセナル。ニューカッスル戦ではエメリ監督が取り組んでいる戦術変更が垣間見えた一方で、様々な課題も散見されました。
 

 

戦術における変化

  1. バックラインからパスをつなぐ意識
  2. ロングボールを拾う意識
  3. 中盤に配置されたプレイヤーのカバー意識
 
  • バックラインからパスをつなぐ意識
エメリ監督はバックラインからのパス交換をチームに徹底させているように見受けられます。この傾向は新シーズン開幕当初から顕著で、解説者たちがこの戦術について色々議論を交わしています。
プレミアリーグではマンチェスターシティーやチェルシー、リバプールなどのチームも後方からのパス回しを重要視しています。今ストーブリーグにおけるゴールキーバーの移籍金額が高騰した理由は、このトレンドに即した、足でうまくボールをさばけるキーパーを各クラブが獲得を試みたことが一因であることは間違い無いでしょう。
アーセナルはドイツの1部リーグに所属するバイヤーレバークーゼンから、ドイツ人ゴールキーパーのベルント・レノを獲得しました。しかし今節までの5試合では前年度までの正守護神ペトル・チェフがゴールマウスを守っています。チェフはセービングには定評がありますが、パスの正確さにはいささか課題を抱えています。これからのシーズンではチェフがレノに守護神の座を明け渡すことになるのかどうか、注目されます。
ゴールキーパーやコンビネーションの問題は改善されなければなりませんが、少なくともバックラインからパスをつなぐ意識が芽生えている点においてポジティブになるべきでしょう。
 
  • ロングボールを拾う意識
あまり体が強く、長身で空中戦の競り合いに勝てる選手を獲得、起用してこなかった前アーセン・ベンゲル監督。彼はあまりロングボールを意図的に使う意識がなかったのか、以前はロングボールを蹴っても、中盤であまり効果的にそのボールを回収できていませんでした。
今シーズン、今までのところ前線にはオーバメヤン、もしくはオーバメヤンとラカゼットの組み合わせでゲームに臨んでいます。彼らもロングボールをばしばしと納めるタイプのプレーヤーではありませんが、そのセカンドボールに周りの選手たちがある程度反応できています。これは後方からパスをつなぐ意識が広まったことで、ロングボールを蹴るときはある程度狙いが絞れているので、中盤の選手がそのロングボールに対応しやすくなったことが考えられます。
 
  • 中盤に配置されたプレイヤーのカバー意識
中盤のボランチに位置するプレイヤーが、ディフェンスの際にアタッカーが開けたスペースをある程度カバーしています。特にニューカッスル戦では1.5列目に左からオーバメヤン、ラムジー、エジルが配置されており、彼らはあまりプレスバックを行わないため、サイドバックが数的不利になる場面を多く作られる可能性がありました。ボランチのプレイヤーがある程度スペースをカバーできていたため、この試合においてはサイドから決定的なシーンを作られることはありませんでした。相手プレイヤーが意識的にこのエリアを突いていたら、そして強力なサイドアタッカーがいたら、状況は一変していたかもしれません。
少なくともカバーの意識が以前よりは増しています。前線の選手のプレスバックも含め、このエリアのさらなる守備面の強化を図っていただきたいところです。
 

課題、未改善の点

守備面

  1. アタッカーのプレスバック
  2. カウンターへの対処

攻撃面

  1. 前線の動きのなさ
  2. カウンターの準備

全体的に

  1. ゲームマネジメント

 

守備面
  • アタッカーのプレスバック
アーセナル所属の多くのアタッカーがあまりプレスバックを好みません。守備よりも攻撃を重要視する前監督の元、長い年月をかけてチーム内に醸成されたマインドなのかもしれませんが、カウンターを受けている時ならまだしも、しっかりと腰を下ろして相手の攻撃に身構えているような陣形の際にも、積極的には守備に参加しません。ボランチがサイドまでカバーに行くことである程度は対処が可能でしょうが、それでも数的同数では相手次第ではサイドを攻略されかねません。第一、ボランチがサイドに開くと、中央のスペースやセンターバックが開けたスペースなどさらに危険なエリアへの対応がおろそかになりかねません。
ラムジーのように気が向いたときだけ躍起になってボールの奪取を試みるのではなく、しっかりと組織として守れるように早急に守備の整備を進めるべきです。
 
  • カウンターへの対処
カウンターへの対処は以前からの課題でありました。カウンターは受ける前、つまり攻めている際の準備と、実際に相手がカウンターを発動した際の受け方という2つの観点から対策を打つべきです。アーセナルはどちらもうまく対応できているようには見受けられません。
アーセナルのセンターバック2枚はどちらも足が速いわけではありません。しかし攻撃の際には彼らはセンターラインの前までラインを上げていることがしばしば見られます。つまり相手からするとボールを取ってからバックラインの裏のスペースを突きたいわけです。これを阻止するにはボールを取られた際に、すぐにそのスペースにロングボールを蹴らせないようにすることです。
また、中盤あたりにスペースがあると、相手選手がドリブルで持ち上がり、そのスペースを有効活用されることになります。攻めながらも中盤のバランスを確保することである程度対応可能です。
そのほかにもベジェリンが攻撃参加した際に開けた背後のスペースのケアもしかり、カウンターを防ぐために様々なことを念頭に置き、対応策を練らなければなりません。まずは攻めている際のバランスと、ボールを取られてからの最初のワンプレー、ツープレーを大切にし、そこだけでも全力で前線からプレスをかけるように徹底するべきではないでしょうか。
 
攻撃面
  • 前線の動きのなさ
前監督から前線の動きのなさは顕著でした。ボールを受ける動き、スペースを空ける動き、味方を生かす動き、これら前線に流動性をもたらす動きが欠如しているためどうしても最終局面の打開は個々人の能力頼りです。
ラムジーは裏に抜ける動きをしますが、そのラムジーが開けたスペースが有効に使われることはあまりありません。ラカゼットは前線でディフェンダーを背負ってボールを受けたり、ディフェンダーとディフェンダーの間でボールを受け、そのまま前進するようなプレーには長けていますが、あまり最終ラインから降りてきて、くさびのボールを受けるような動きはしません。オーバメヤンは足元でボールを受けたがりすぎるきらいがあります。
前線で動きが少ないとどうしても攻撃が停滞してしまいます。するとボランチの選手のパスの出しどころがなくなってドリブルを試みることになってしまったり、パスをする前に捕まってしまったりして、カウンターを受けるリスクも高まります。個々人でこの状況を打破することは難しいと思うので、ぜひエメリ監督には前線の流動性のトレーニングも積極的に練習してもらいたいです。
 
  • カウンターの準備
カウンターを狙う準備ができていると、日本がW杯で受けた目覚ましいカウンターが繰り出せる可能性が上がります。今シーズン、ここまでのところ、アーセナルが綺麗なカウンターを狙っているようには見えません。もちろん相手のカウンターを受ける準備とこちらのカウンターをする準備との兼ね合いもあります。しかしそれにしてもアーセナルが計画的にカウンターを仕掛けている、もしくは仕掛けようとしているところはまだ見受けられません。
守備の組織がしっかりと整備されてきている現代のサッカーではオープンプレイからではそう易々と得点できません。少なくとも狙いを持ったカウンターのプランをいくつか用意しておいて、得点確率を高めるべきです。
 
全体的に
  • ゲームマネジメント
後半、リードしている際に、特にベジェリンが右サイドを駆け上がっているシーンが未だに頻繁に見かけます。攻撃に参加すること自体はむしろプラスですが、何も全速力で駆け上がる必要はないでしょう。体力消耗の点から、そしてボールがカットされた時のスペースの管理の点からも危険な行為であることは明白です。
ジャカが無防備に攻め上がって行くシーンは今シーズンは減少しましたが、それでも後半にリードしている、もしくは同点で、そのまま引き分けで良いという状況においても全体的にチームの重心が高く、相手に入らぬ得点の機会を与えています。
優勝を考えてはいないでしょうが、4位以内に入り、来季のチャンピオンズリーズ参戦の権利は狙っているはずです。下位チームに無駄な取りこぼしが目立つと4位奪取に向けて致命傷になりかねません。以前のトップ4のような状況ではなく、今はトップ6、そしてアーセナルはその中でも最後尾に属していると目させているのですから、もう少し慎重にゲームを展開しても良いと感じます。
 
 
                                       
 
 
第3節から始まった3連勝のすべての試合において、試合展開的に足元をすくわれていた可能性が大いにあります。次節の相手はウェストハムに今季初白星を献上したエバートンです。しかしエバートンがかっていたシナリオも十分に描けるほど、試合内容は拮抗したものでした。
一歩間違えればホームといえども簡単に敗戦を喫してしまうほどエバートンも良いチームを作り上げています。週中にヨーロッパリーグの試合があり、チームの完成度を向上させるにはあまり時間が足りないかもしれませんが、少なくとも改善点に変化の兆しが見られることを祈っています。