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 Ambitious newcomers ウォルバーハンプトン分析「攻守ともにハイレベル」対マンU

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2016年に中国の投資会社、復星国際 Fosun International Limited が買収したウォルバーハンプトン(以下ウルブス)。この中国系会社との関係から、クリスティアーノ・ロナウドの代理人も務めるジョルジュ・メンデス(ポルトガル人)のマネジメント会社がクラブ経営に携わるになり、多くの有能なポルトガル人を獲得することに成功し、今年大きな野心を胸に2部リーグからイングランド1部リーグ「プレミアリーグ」に昇格してきました。
 
そんなウルブスとマンUとの一戦は1対1の引き分けで幕を閉じました。今シーズンの第3節にはホームで昨シーズンの王者マンCと引き分け、そして第6節に強豪マンUのホームでまたしても引き分けを勝ち取りました。
 

 

近年のプレミアリーグチームの戦術と得点傾向

近年プレミアリーグに所属するチームの守備組織がどんどんと整備されていたことで(自陣に引きこもってしまうだけのチームの守備の場合でも「整備されている」と言えるかは議論の余地がありそうですが)、綺麗に相手チームの守備を攻略するような形の得点は少なくなってきたように感じます。このような組織された守備を打開するにはいくつかの方法が考えられます。
 
  • クロスから
  • パスワークから
  • 個人技から
  • カウンターから
  • 偶然から
 
どんなにたくさんの選手がいても、ピンポイントでクロスがアタッカーに合えば高確率で得点が期待できます。また綺麗なパスワークを駆使することで相手選手の間をすり抜けていく方法も効果的です。バルセロナのサッカーがこの形の象徴と言えるでしょう。スーパーな選手は遠くからのミドルシュートやドリブルで相手陣形を切り裂くことで得点を上げることができます。またアバウトでも相手のペナルティーエリア内にクロスやパス、ドリブルを仕掛けることでいいところにボールがこぼれて得点を生むケースもあります。
実際には個人技と偶然とが、良いクロスやパスワークと組み合わさって得点を生むケースが多いと考えて良いでしょう。
問題は良いクロスやパスワークもしくはスーパープレイヤーによる個人技が普通のチームではそうやすやすと生み出せるわけではない点にあります。
もちろん濃淡がありますが、バルセロナのような華麗なパスワークは普通のチームにはあまり真似できません。相手を置き去りにするようなドリブルを繰り出せる選手や性格無比なミドルシュートを打てる選手などは非常に高額でビッククラブでないと獲得できません。
そうなるとどうしてもアバウトな攻撃を繰り返すことで得点を狙う機会が増えてきます。
 
カウンターはそのようなチームにとってとても魅力的なオプションです。カウンターを仕掛ける際には、基本的に相手の守備の枚数は少なく、緻密なパスワークや2、3人を置き去りにするようなドリブルでなくともシュートチャンスまで持っていくことができます。
ウルブスはこのカウンターによる攻撃、もしくはカウンターのような相手に守備の枚数が揃っていない場面を作るのが巧妙なチームに見えました。
 

ウルブスの攻撃

  1. バックラインのパス回しが巧み
  2. 長短のパスを入り交ぜる
  3. アタッカーはスペースに入ったり、背後に抜ける動きでボールを引き出せる
  4. 攻めきる意識が徹底されている
  5. 技術の高いアタッカーが揃っている
 
 
バックラインのパス回しが巧み
 
ウルブスはバックラインのパス回しが巧みなので、相手のアタッカー陣のプレスをさらりとかわせます。そうするとプレスをかけていた3、4人のアタッカーが守備のために帰陣する前に、つまりいつもよりも手薄な守備網に攻撃を仕掛けることができるのです。
マンU戦でもうまくプレスをかいくぐり、センターライン付近でウルブス4選手、まんU4、5選手というショートカウンターが発動したような場面をいくつも作れていました。
 
長短のパスを入り交ぜる
 
ウルブスの選手、特にバックラインからその前のボランチに配置された2人の選手はロングパスの精度にも長けていました。そのため中盤を飛ばして前線に送ったボールもある程度アタッカーが収めることができていました。
ロングパスの精度が高いと、ディフェンダーが後ろのスペースを空けすぎるわけにはいかなくなるので、アタッカーへの前からのアプローチに行きづらくなり結果としてそのアタッカー達にパスが入りやすい状況も作れていました。
 
アタッカーはスペースに入ったり、背後に抜ける動きでボールを引き出せる
 
アタッカーの選手にはあまり動かずにボールが自分の足元にもらえる機会を待っている選手も少なくありません。たとえ動いていてもスペースがないところにボールをもらいに行ったり、背後に抜けるタイミングがあまりうまくなかったりするとそのプレーはあまり意味を持ちません。
ウルブスのアタッカーはしっかりとスペースに入って行ったり、背後に抜け出す動きができていたので、後方からのショートパスやロングパスを受けられていました。
 
攻めきる意識が徹底されている
 
人数がかかって、整備された守備を突破するのは困難なことを冒頭で触れました。たとえいい形で攻撃を仕掛けることができても、時間がかかってしまうと相手のアタッカーが帰陣してしまい、結局どこかで相手にボール奪取されてしまう可能性が高くなります。
マンU戦では、ウルブスはいい形で始まった攻撃は攻めきる意識が徹底されているのか時間をかけずに、少々強引な形でもシュートチャンスまで持って行こうとしていました。この姿勢が多くのチャンスを生み出し、また同点ゴールの引き金になりました。
 
技術の高いアタッカーが揃っている
 
ウルブスには中国資本とジョルジュ・メンデスのコネクションもあってか、技術のある前線の選手が所属しています。
確かに上述したポイントはとても大切でしょうが、ある程度技術がないとディフェンダーとの勝負の局面が勝ち切れず、攻めきる意識はあっても、ビックチャンスを作る前にボールを奪われてしまいます。
ウルブスのアタッカーはマンUディフェンダーともある程度渡り合えるような技術があったのでチャンスを作れていました。ただシュートの精度には改善の余地がありそうです。
 
                                       
 
 
守備組織も他のチーム同様に整理されていたウルブス。もしフィニッシュの精度に磨きをかけることができれば今シーズンは台風の目のような活躍をしてくれるかもしれません。