アレクサンダー・アーノルドはスカウサー(リバプールアクセント)
「スカウサー 'Scouser' 」って聞いたことありますか。数ある英語アクセントでも特にリバプール地方のアクセント(スカウス 'Scouse' )で話す人を指します。
プレミアリーグはリバプールに所属する Trent Alexander-Arnold 「トレント アレクサンダー・アーノルド」は生まれも育ちもリバプール。彼もスカウスアクセントで英語を話します。
今回は先日の「Totteham vs Liverpool」の試合後インタビューの映像を見て、スカウサーの話し方の特徴を見ていきましょう。
アレクサンダー・アーノルドのインタビュー映像
(英語字幕を付けてご覧ください。)
正直に打ち明けると、私も英語字幕なしでは聞き取りづらい箇所がいくつかあります。
特に 'setback after setback' の辺りは最初、頭に ? が浮かびました。
※以下URLから該当箇所に飛べます
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=57
スカウサーの特徴
スカウスアクセントは特にどの様な特徴があるのでしょう。アレクサンダー・アーノルドのインタビューで際立っていたところを軸にいわゆる RP (Received Pronunciation 「標準的な発音」)と比較します。
最後の単語の語尾が上がる
スカウサーの特徴としてまず一番感じるのが、一文一文の最後の音が上がる、つまり若干疑問文っぽく聞こえることです。
インタビューでの該当箇所を聞き直してみてください。
' ... definitely it's what we needed ...'
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=7
needed の語尾が上がっていることが聞き取れます。
また直後の 'deserved' の語尾も RP と比べると不自然に上がっています。
'... obviously they had the early goal disallowed.'
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=12
disallowed の語尾も上がっています。
' ... yeah we got away with them.'
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=26
ここも最後の them の語尾が上がっています。
以上の様に、スカウサーの英語は文末(もしくは文節末)の単語の語尾が上がる傾向にあります。
アーノルドは正直あまり語尾が上がる様な話し方はしていませんが、スカウスの色が濃い話し手は全文の語尾が上がる勢いでスピーキングします。例えばこんな感じです。
右手の金髪の女性は話すときは基本、語尾が上がる様に話します。参考までに。
/ʌ/ の音がより 'o' に近く
日本人が若干苦手にしている /ʌ/ の音。この発音の代表格が but /bʌt/ です。
日本語の「あ」は発音するときに口を大きく開きます。ざっくり言うと「あ」と発音する感じで口を少しだけすぼめる(「う」と言うときの形に近づける」)とこの /ʌ/ っぽい発音ができます。
試しに /ʌ/ と /a/ を聞き比べてみてください。
本題はここから。スカウサーの場合、この /ʌ/ を発音するときは、さらに口の形をすぼめて「お」を発音するときの形で音を出します。
そうすることで /ʌ/ がより「お」に近い音に聞こえるのです。アーノルドが but を発音するところを聞いてみましょう。
' ... change the way that the game went on but ... '
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=15
but の発音が「バット」よりむしろ「ボット」に近づいているのが聞き取れます。
' ... we found the space in the first half really as well, but ... '
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=42
こちらでも but の発音が RP のそれとは少し異なるのが聞いて取れます。
ちなみにこちらの動画でもスカウサーの /ʌ/ の発音方法が取り上げられているので、ご参考ください。
※該当箇所から再生されます。
ck の発音方法
スカウサーの ck の発音方法は特に変わっています。私ごとでドイツ語を勉強中ですが、スカウサーの ck はむしろドイツ語の ch の音と類似しています。
まずは実際の音を聞いてみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=CpHT4z3wXfQ&ab_channel=BTSport&t=57
ck の音は英語のいわゆる k の音ではありません。ドイツ語の ch の様に喉の奥を震わせたときに出る音です。
こちらの音もこの動画に解説がありますので、ご参考までに。
※該当箇所から再生されます。
英語学習は楽しさと勉強を両面から考えよう
英語を含む言語学習の一番のポイントは「一朝一夕で身につかないこと」です。知能指数が高い人でも、少なくとも2200時間以上は言語習得までに時間を有すると言われています。少なくとも、です。
「100時間がんばれ!」なら最悪気合で乗り切れるかもしれませんが、
「3000時間頑張れ!(毎日5時間を2年弱/毎日3時間を3年強)」は特に社会人になってからは正直無理です。
本気で英語を身につけたいなら、英語を勉強すること、そして今回の「スカウサーはどうやって話すんだろう」とか「英語はそんなに聞き取れないけど英語でドラマ見よ〜」とか自分が面白いな、と思える内容を組み合わせて、英語への興味を失わないことが一番大切です。
興味がないこと、楽しくないこと、インセンティブを生まないことを3000時間続けられません。まずは楽しいなー、かっこいいなー、という気持ちを失わない様に勉強を続けていきましょう!